Lorem Ipsum の起源と、ダミーテキストとして使い続けられる理由

約6分

「Lorem ipsum dolor sit amet…」というラテン語のテキストを、Web デザインや印刷物のモックアップで見たことがあるはずです。これはダミーテキストの世界標準ですが、起源は意外に古く、紀元前のラテン語著作にまで遡ります。

起源:キケロの『善と悪の究極について』

Lorem Ipsum の元テキストは、紀元前 45 年のローマの政治家・哲学者キケロの著作 『De Finibus Bonorum et Malorum』(善と悪の究極について) の一節です。

オリジナルの一節:

Neque porro quisquam est qui dolorem ipsum quia dolor sit amet, consectetur, adipisci velit…

訳:「痛み自体が痛みであり、苦しいから、苦しみそれ自体を欲する人はいない…」

この文章を 16 世紀の印刷業者がスクランブルして再構成したものが現代の Lorem Ipsum です:

Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit, sed do eiusmod tempor incididunt ut labore et dolore magna aliqua.

意味のあるラテン語ではなく、意味を持たない文字列として使うために単語を入れ替え、新しい単語(“lorem” など実在しない語)を加えています。

なぜ 500 年使われ続けるのか

理由は複数あります:

1. 視覚的にラテン文字の「自然な分布」を再現

Lorem Ipsum は、ラテン文字の頻度分布(母音と子音のバランス、単語長)が 自然な英語に近いように調整されています。これにより:

  • フォントの可読性チェックに使える
  • レイアウト時の文字密度が現実に近い
  • 全角/半角の切り替えが起きない

2. 意味がないので意味に気を取られない

実在の文章(例:シェイクスピアの一節)をダミーに使うと、内容が気になってデザインの議論が脱線しがち。Lorem Ipsum は意味を持たないので、純粋に視覚的な評価ができます。

3. 業界標準の認知度

デザイナーや開発者の間で「これはダミーテキスト」という共通認識があり、レビューでも「文章が変」と指摘されない。

「Lorem」は実在しない単語

Lorem という単語はラテン語に存在しません。もとの「dolorem」(痛み)の頭の “do” が落ちて生まれた、本来意味のない文字列です。

他の単語も多くは実在のラテン語を改変したもの

  • consectetur(実在)
  • adipiscing(“adipisci” の活用形、実在)
  • elit(実在)
  • eiusmod(実在しない、“eiusdem modi” の縮約)

現代のダミーテキスト生成の選択肢

Lorem Ipsum 以外の選択肢:

1. 「Bacon Ipsum」「Cupcake Ipsum」など

英語のテーマ別ダミー:

  • Bacon Ipsum:肉系の単語
  • Cupcake Ipsum:スイーツ
  • Hipster Ipsum:ヒップスター用語

ジョークとして使われることが多いが、本格的なデザイン用途では Lorem Ipsum が無難。

2. 日本語ダミーテキスト

日本語で Lorem Ipsum 相当のものは:

  • 「あのイーハトーヴォのすきとおった風…」:宮沢賢治『春と修羅』の冒頭
  • 「いろはにほへと ちりぬるを…」:いろは歌
  • 吾輩は猫である の冒頭

CJK 文字は Latin と文字幅が違うため、Lorem Ipsum をそのまま使うとレイアウトが偏ります。日本語サイトのモックアップには日本語ダミーが必要。

3. AI 生成の文脈テキスト

最近は ChatGPT などで「ニュース記事風のダミー」「商品説明風のダミー」を生成する手法も。実コンテンツに近いテストができる利点がある一方、レビューで内容に気を取られるデメリットも。

単語数とレイアウトの目安

ダミーテキストの量を決める目安:

  • ヘッドライン:5〜8 単語(H1)
  • サブヘッド:8〜12 単語(H2)
  • 段落:30〜80 単語(標準的な段落)
  • 記事本文:300〜800 単語(中程度の記事)

レイアウトテストでは、実コンテンツと同じくらいの長さを入れるのがコツ。極端に短い/長いダミーは実際の見た目を再現できません。

注意点:文字エンコーディング

Lorem Ipsum はすべて ASCII なので、UTF-8 エンコーディングのバグに気付きにくい。日本語コンテンツが入る予定のサイトは、必ず日本語のダミーでもテストする必要があります。

特にメール送信、PDF 生成、画像内テキストなどで、Lorem Ipsum だけでテストすると本番で文字化けが発覚することがあります。

まとめ

  • Lorem Ipsum は紀元前のキケロの文章を 16 世紀に再構成したもの
  • 意味のないラテン文字列として、意味に気を取られず視覚デザインに集中できる
  • 文字頻度分布が英語に近く、レイアウトテストに適している
  • 日本語サイトには別途日本語ダミーが必要

ダミーテキストを段落数や文字数を指定して生成したい場合、本サイトの Lorem Ipsum 生成ツールが使えます。