Lorem Ipsum の起源と、ダミーテキストとして使い続けられる理由
「Lorem ipsum dolor sit amet…」というラテン語のテキストを、Web デザインや印刷物のモックアップで見たことがあるはずです。これはダミーテキストの世界標準ですが、起源は意外に古く、紀元前のラテン語著作にまで遡ります。
起源:キケロの『善と悪の究極について』
Lorem Ipsum の元テキストは、紀元前 45 年のローマの政治家・哲学者キケロの著作 『De Finibus Bonorum et Malorum』(善と悪の究極について) の一節です。
オリジナルの一節:
Neque porro quisquam est qui dolorem ipsum quia dolor sit amet, consectetur, adipisci velit…
訳:「痛み自体が痛みであり、苦しいから、苦しみそれ自体を欲する人はいない…」
この文章を 16 世紀の印刷業者がスクランブルして再構成したものが現代の Lorem Ipsum です:
Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit, sed do eiusmod tempor incididunt ut labore et dolore magna aliqua.
意味のあるラテン語ではなく、意味を持たない文字列として使うために単語を入れ替え、新しい単語(“lorem” など実在しない語)を加えています。
なぜ 500 年使われ続けるのか
理由は複数あります:
1. 視覚的にラテン文字の「自然な分布」を再現
Lorem Ipsum は、ラテン文字の頻度分布(母音と子音のバランス、単語長)が 自然な英語に近いように調整されています。これにより:
- フォントの可読性チェックに使える
- レイアウト時の文字密度が現実に近い
- 全角/半角の切り替えが起きない
2. 意味がないので意味に気を取られない
実在の文章(例:シェイクスピアの一節)をダミーに使うと、内容が気になってデザインの議論が脱線しがち。Lorem Ipsum は意味を持たないので、純粋に視覚的な評価ができます。
3. 業界標準の認知度
デザイナーや開発者の間で「これはダミーテキスト」という共通認識があり、レビューでも「文章が変」と指摘されない。
「Lorem」は実在しない単語
Lorem という単語はラテン語に存在しません。もとの「dolorem」(痛み)の頭の “do” が落ちて生まれた、本来意味のない文字列です。
他の単語も多くは実在のラテン語を改変したもの:
consectetur(実在)adipiscing(“adipisci” の活用形、実在)elit(実在)eiusmod(実在しない、“eiusdem modi” の縮約)
現代のダミーテキスト生成の選択肢
Lorem Ipsum 以外の選択肢:
1. 「Bacon Ipsum」「Cupcake Ipsum」など
英語のテーマ別ダミー:
- Bacon Ipsum:肉系の単語
- Cupcake Ipsum:スイーツ
- Hipster Ipsum:ヒップスター用語
ジョークとして使われることが多いが、本格的なデザイン用途では Lorem Ipsum が無難。
2. 日本語ダミーテキスト
日本語で Lorem Ipsum 相当のものは:
- 「あのイーハトーヴォのすきとおった風…」:宮沢賢治『春と修羅』の冒頭
- 「いろはにほへと ちりぬるを…」:いろは歌
- 吾輩は猫である の冒頭
CJK 文字は Latin と文字幅が違うため、Lorem Ipsum をそのまま使うとレイアウトが偏ります。日本語サイトのモックアップには日本語ダミーが必要。
3. AI 生成の文脈テキスト
最近は ChatGPT などで「ニュース記事風のダミー」「商品説明風のダミー」を生成する手法も。実コンテンツに近いテストができる利点がある一方、レビューで内容に気を取られるデメリットも。
単語数とレイアウトの目安
ダミーテキストの量を決める目安:
- ヘッドライン:5〜8 単語(H1)
- サブヘッド:8〜12 単語(H2)
- 段落:30〜80 単語(標準的な段落)
- 記事本文:300〜800 単語(中程度の記事)
レイアウトテストでは、実コンテンツと同じくらいの長さを入れるのがコツ。極端に短い/長いダミーは実際の見た目を再現できません。
注意点:文字エンコーディング
Lorem Ipsum はすべて ASCII なので、UTF-8 エンコーディングのバグに気付きにくい。日本語コンテンツが入る予定のサイトは、必ず日本語のダミーでもテストする必要があります。
特にメール送信、PDF 生成、画像内テキストなどで、Lorem Ipsum だけでテストすると本番で文字化けが発覚することがあります。
まとめ
- Lorem Ipsum は紀元前のキケロの文章を 16 世紀に再構成したもの
- 意味のないラテン文字列として、意味に気を取られず視覚デザインに集中できる
- 文字頻度分布が英語に近く、レイアウトテストに適している
- 日本語サイトには別途日本語ダミーが必要
ダミーテキストを段落数や文字数を指定して生成したい場合、本サイトの Lorem Ipsum 生成ツールが使えます。